全54作品ある小津作品の中でも、『東京物語』や『晩春』など、後期に手掛けた代表作が注目されることが多い中、今回スポットライトを当てるのは、映画監督人生の原点ともいえる初期サイレント映画群。今までフォーカスされることが少なかった初期作品を通して、小津安二郎の知られざる一面を垣間見るとともに、現代においても色褪せない普遍性を持ちあわせた物語をこの機会に新たな視点でお届けした。更に、総合編成のWOWOWだからこその取り組みとして、礎となった映画をセットで編成し、小津作品の魅力を視聴者が多面的に発見できるきっかけを提供した。また本ドラマは、第 36 回東京国際映画祭のTIFFシリーズ部門出品作に選定された。
作品紹介
日本が世界に誇る巨匠・小津安二郎監督の生誕120年を記念して、初期サイレント映画6作品を気鋭の映画監督6人が現代設定に置き換え、オムニバスドラマ形式でお送りする「連続ドラマW OZU ~小津安二郎が描いた物語~」。2023年11月に第1~3話を、12月は残る第4~6話を含む全6話を一挙放送・配信した。これに合わせて「映画とドラマで観る小津安二郎の世界」と題し、ドラマのオリジナルとなった小津監督の初期サイレント映画6作品の[新音声版]を編成。リメイクしたドラマとオリジナルの映画をセットで楽しんでいただくよう、ドラマと映画をセットで2日間にわたり3作品ずつ、一挙特集編成を
行った。
作品動画
【審査員講評】
■スカパーJSAT 株式会社 プラットフォーム編成部 アシスタントマネージャー 伊田 千恵実
小津安二郎監督の初期作品に着目した斬新な企画であり、ドラマの随所に小津監督作品へのリスペクトが感じられる。時代が変われども普遍的な価値や社会問題が丁寧に描かれており、ドラマを通して映画がより楽しめる企画である。
■株式会社 角川アスキー総合研究所 ビジネスプロデュース事業部 コンテンツ制作2部 部長 片岡 研
小津安二郎の、初期サイレント映画に光を当てた企画性が秀逸。しかも6作品のシリーズで理解がしっかり深まる仕掛け。ドラマ自体も、現代が舞台になってはいるが小津作品らしい空気感は保たれ、元の作品と見比べたいと思わせる良作だった。
■JCOM 株式会社 放送事業部 マネージャー 難波 結花
発掘の妙を体現した取り組み。「古いものを新しく見せる」という発想が素晴らしく、小津作品の魅力を知らない世代に対しても、訴求できていると感じた。