衛星放送協会は、協会会員社が提供する有料・多チャンネル放送の啓蒙、普及発展を推進する団体です。

活動報告

衛星放送協会主催 第10回 人材育成セミナー

2017.03.22

第10回の人材育成セミナーは、『多チャンネル放送業界の未来に向けて~セルフ・イノベーションと若者マーケティング~』をテーマに開催されました。

今回のセミナーでは、社会に向けて自己改革を提唱し、様々な企業で改革を起こしてきた株式会社リアルディア代表取締役社長 前刀禎明氏、若者のブランディング研究の第一人者である博報堂ブランドデザイン若者研究所 リーダー 原田曜平氏のお二人をお招きして、それぞれの専門領域で経験された見識を中心に講演いただきました。

前刀 禎明 氏

前刀 禎明 氏

第一部の講演では、まず前刀氏から「新たな価値を生むセルフ・イノベーション」をテーマにお話しいただきました。ご自身が日本法人の代表を務められたアップルで、当時は“オタクガジェット”に留まっていたアップル製品を“ファッションアイテム”としてリブランディングし、大ヒットに導いたiPod miniのマーケティング戦略の裏側など具体的な事例を挙げ、未来に向けて時代をリードする上で必要な「感性」についてお話し頂きました。特にエンターテイメントは、人の持っている欲求を探し当てることが肝要であり、そのためには五感を磨き、常に自己を革新していく必要性を話されました。

原田 曜平 氏

原田 曜平 氏

次に原田氏から「『若者』とはなにか?若者マーケティングで時代をつくる」をテーマにお話し頂きました。テレビ業界、車、お酒などに限らず、今やあらゆる業界で「若者の○○離れ」が悩みの種になっている中で、現代の若者の消費動向を以前と比べてどのように変化しているのかを知り、新たな販路の拡大を重要課題と認識している企業は数多くあるそうです。今の若者たちは「不景気(感)が前提」の時代に育ち、「ケータイ化とともに」生きてきた消費趣向や、若者を取り込む効果のあった事例など、『さとり世代』、『マイルドヤンキー』の流行語を産み出した原田氏ならではの研究を元に、現代の若者像とマーケティング戦略について話されました。

講演後には、「多チャンネル放送業界の未来に向けて」をテーマに、両講師によるディスカッションと質疑応答の時間を設けました。放送業界における若手人材の育成や、組織の活性化術に対する質問では、原田氏から「『さとり世代』であっても成長意欲の強い若者がいることから、会社は彼らの成長意欲を支援することが重要」とのアドバイスがありました。若者層の顧客獲得に関しては前刀氏から「デジタルメディアの音楽を聞き慣れたことにより、ライブの音が新鮮に感じるようになった」というご自身の体験を元に、技術革新や流行によって、廃れたものが見直される可能性があることや、地上波放送にはない内容の番組がOTT市場で支持を得ていることを例示し、「ターゲット層の欲求に応える番組作りを多チャンネル放送業界に期待している」と、更なる活性化に向けてご意見を伺いました。 講演後の懇親会では前刀氏が出席され、参加者からセミナーの感想や、仕事上の悩みについても耳を傾けられ、丁寧にお答え頂きました。 参加者は、講演と懇親会を通して、多チャンネル放送業界に必要な変化や在り方について、理解を深める有意義なセミナーとなりました。

   

講師 講演1.「新たな価値を生むセルフ・イノベーション」
    株式会社リアルディア 代表取締役社長 前刀 禎明 氏
講演2.「『若者』とはなにか?若者マーケティングで時代をつくる」  
    博報堂ブランドデザイン若者研究所 リーダー 原田 曜平 氏
開催日時 平成29年3月1日(水)15:00~19:30
会場 明治記念館 孔雀の間
参加社数 22社 71名

page top

災害対策委員会~震災対策セミナー

2017.02.10

中澤幸介氏

中澤幸介氏

災害対策委員会主催により、震災対策セミナー「熊本地震で企業はどう動いた?~企業が今備えるべきリスクと対処策」が、2月3日(金)、危機管理とBCPの専門メディア『リスク対策.com』編集長の中澤幸介氏をお招きして、衛星放送協会にて開催されました。

今回は2度の震度7を観測した熊本地震発生時に地元企業が直面した現実に対して、その本社と現地双方が如何に対応したかを検証することでみえてきた“企業が今備えるべきリスクと対処策”について、総括する内容でした。

講演では、富士フィルム九州、イオン、地元工務店の具体的事例を題材に危機管理の基本とBCPの改善について分かりやすく解説していただきました。

講演のまとめとして中澤氏の「あらゆる危機は、予測することができれば予防しやすくなり、予防することができれば対応しやすくなります。逆に予測できなければ予防しにくくなり、予防しなければ対応が大変になります。」という言葉はまさに危機管理の原理原則といえます。常日頃から危機管理・BCPについて考え、シミュレーションを行って準備しておくことの重要性を再認識させられました。

最後の質疑応答では、参加者たちの熱心な質問に危機管理・BCPへの関心の高さがうかがえました。また、参加者全員に危機管理が1枚でわかるカレンダー「LIFE 2017」が配布され盛況のうち閉会となりました。

開催日時 平成29年2月3日(金)
会場 衛星放送協会会議室(赤坂)
参加社数 14社 31名

page top

2017年 年頭記者会見

2017.01.24

1月17日、衛星放送協会の賀詞交換会に先立ち年頭記者会見が、元赤坂の明治記念館にて開催されました。

年頭挨拶 和崎会長
和崎会長

和崎会長

この一年の衛星放送協会を取り巻く状況を振り返って見ますと、皆様ご存じの通り、8月にNHK、12月には一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A-PAB)による、BS放送を通じた4K・8K試験放送がスタートし、10月から衛星基幹放送の業務認定の申請受付が行われるなど、4K・8K放送に向けて大きな前進が見られた1年でした。

一方、インターネットを使った映像配信市場では、多様化する利用者の生活スタイルを背景に、huluやNETFLIX、Amazonプライムといった従来のサービスに加え、スポナビライブ、DAZON(ダ・ゾーン)といった、人気スポーツコンテンツの生配信を軸としたサービスが開始され、映像配信業界は生き残りをかけた模索が続いています。同時に、こうした環境下でコンテンツの獲得競争や囲い込みによって放映権料の高騰が見られ、有料衛星放送業界としても、今後どのように向き合っていくか、難しい選択を迫られる1年でもありました。

放送と通信との融合では、昨年10月にNHKを含めた放送のネット同時再送信に向けた答申が総務大臣より提案され、12月には地上波民放の見逃しサービスTVERが500万ダウンロードを突破するなど、放送と通信のシームレス化に向けて、官民の動きが更に活性化を見せた年でもありました。

そして、今年に入り1月11日には電波監理審議会から衛星基幹放送の業務認定の答申が発表され、BS-右旋、BS-左旋、CS110度それぞれの認定社の概要が固まるなど、いよいよ2018年の実用放送に向けたロードマップが明確なものとなってきました。来るべき4K・8K時代を目の前にして放送ビジネスの在り方を具体的に見出し、どのように花を咲かせていくのか、関係者はその選択を迫られることになります。そのようなことから、今年は 次の時代に向けた鍵となる重要な年と捉えております。

次に、有料多チャンネル放送の契約者数をご報告します。
昨年11月末現在で、1,365万件となりました。ケーブルテレビ局を中心に数値を伸ばし、前年同期比ではプラス5万件となりましたが、平成27年度末(平成28年3月末)の数値が1,368万件でしたので、トータルでは今年度に入り微減の状況となっています。動画配信サービスの本格普及なで、環境はますます厳しさを増すことが予測されますが、引き続き年度末に向けて上昇トレンドを掴めるよう各社の皆さんと話しをしているところでございます。

さて、2017年の取り組みですが、先ほども申し上げたように、4K・8K放送は2018年の実用放送に向けたロードマップが具体的に動き始めています。総務省の「放送を巡る諸課題に関する検討会」においても、これまで以上に衛星放送を巡る様々な議論が活発に行われている中で、衛星放送協会としても視聴環境分科会のほか、関係するワーキンググループに参加し、積極的な発信を行うと共に、情報を会員各社と共有するなど、引き続き活動して参ります。

一方、本格的な4K時代に入ろうとするなかで、110度CS放送のHD高画質化については喫緊の課題と捉えており、今年は是非、前進させたいと考えています。帯域の問題が絡むだけに、衛星放送協会だけで解決出来ることではありませんが、官民一体となって何としてもこの問題に解決の道筋を付けたいと考えております。

放送や通信を巡る環境が大変厳しくなるなかで、競合サービスとの差別化を図り、有料多チャンネル放送市場が成長する根幹を支えるのは、やはり番組であり、コンテンツだと確信しております。衛星放送協会は引き続き、会員社のオリジナル番組制作を推進するため「オリジナル番組アワード」の開催に力を注ぐ所存です。次回、「第7回衛星放送オリジナル番組アワード授賞式」は7月13日(木)に開催いたします。

協会の付属機関である、「多チャンネル放送研究所」は、中・長期的な視点で有料多チャンネル放送の将来像を予測し、その価値を高めるために調査、分析を実施して参りました。そして昨年 12月には、その活動の成果として、『メディア融合時代到来!【コンテンツ至上主義】視聴者が「選ぶ」メディアは?』のタイトルで書籍を出版いたしました。
また、衛星テレビ広告協議会(CAB-J)は、「機械式ペイテレビ接触率調査」を実施し、そのデータは、新たな広告施策に活用されています。これら2つの機関は衛星放送協会が今後の施策を推進するうえで重要な役割を担っていくと考えおりますので、引き続きご理解とご支援をお願いいたします。

衛星放送協会は2017年も、世界をリードする次世代放送サービスの実現に向けて、制度面の支援や、オリジナルコンテンツ制作の推進などを通じ、その一翼を担いたいと考えております。
是非皆さまのご支援ご贔屓を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

オリジナル番組アワード審査委員長挨拶 吉岡 忍審査委員長
吉岡 忍審査委員長

吉岡 忍審査委員長

オリジナル番組アワードはこれまで6回続けて参りましたが、前回も世の中の動きに切り込み、そして鋭く表現した作品が各部門で集まっておりました。審査員一同、こういった作品を審査しながら、大変ワクワクする感じを持ちました。ただ、アニメ部門においては、これだけ日本のマンガ、アニメ分野が凄いと言われながら、少し低調さが目立ちました。是非各チャンネルがこの部門にも力を入れて、様々な作品を作る状況が生まれて欲しいと思います。
昨年のアワード大賞受賞作品「大相撲いぶし銀列伝」では、相撲という分野で、負けた人の言葉が持つ力を引き出した作品のセンスを高く評価しました。次回のアワーでも、それぞれの製作者の思いやセンスが込められた作品が、たくさん集まることを期待しております。

今年は、これまでと発表の仕方が変わります。最終審査は6月の上旬に行われ、各部門の最優秀賞は審査直後6月12日(月)に発表する予定です。ただし、アワード大賞については、7月13日(木)の授賞式で発表します。たくさんのすばらしい作品が集まることを期待致しております。

多チャンネル放送研究所 活動報告 音所長
音所長

音所長

昨年の活動と今年の活動方針についてご報告致します。
昨年は、「将来予測」、「コンテンツ分析」、「視聴者分析」3つのワーキンググループに分かれて活動を行い、多チャンネル放送研究所の定例調査「多チャンネル放送の実態調査」、「事業予測調査」、「視聴者調査」を実施し、随時報告させて頂きました。その成果として、これまで蓄積した数年のデータを含めた形で、『メディア融合時代到来!【コンテンツ至上主義】視聴者が「選ぶ」メディアは?』という本を12月に出版させていただきました。多チャンネル放送研究所がこれまで行ってきた調査結果、調査データを踏まえて、随時報告させて頂いた、多チャンネル放送のあり方をロングレンジで取りまとめております。是非お目通し頂ければと思います。

今年の調査研究は、3ワーキングを継続して活動を進めますが、特に今のメディア状況は非常に大きく揺らいでおります。ロングレンジで調査データを踏まえ、様々なデータをフィードバックさせて頂くと共に、多チャンネル放送研究所が設立されて10周年となる2018年に向けて、やや長い視点で多チャンネル放送に関するデータ整理と問題提起が出来ればと考えております。是非ともご支援のほど宜しくお願い致します。

衛星テレビ広告協議会CAB-J 活動報告 園田専務理事
園田専務理事

園田専務理事

CAB-J会長の滝山が、業務の都合で欠席のため、私が代理でCS/BSペイテレビ広告の状況についてご報告させて頂きます。

今年度上半期(平成28年4月~同年9月)のCS/BSペイテレビ広告売上は105億8千万円と、前年同期の実績を5.7%上回る数字となりました。対前年同期で2年ぶりの増収となります。これは、イベント、番組等と連動した企画広告が堅調だったことが主な要因です。メディアの皆様やアドバタイザー・広告会社の皆様のお力添えを頂きながら、平成28年度通期においても昨年度の207億8千万円を上回ることを目指し、CAB-J会員各社においては積極的な営業活動を行っております。

今年度の活動状況ですが、昨年の10月と11月に、「CAB-Jセミナー」を、例年開催しております東京・大阪に加え、2年ぶりに福岡においても開催致しました。会場ではチャンネル各社が専門性を活かして実施したイベントや番組連動の販促事例や広告事例、更にはCS/BSペイテレビをご利用頂いたアドバタイザー様の生の声などを映像でご紹介しました。更にレスポンス系の広告出稿が多い福岡では、福岡限定のスペシャル版として、通販広告事例やテレビ通販ユーザー分析のブロックを追加し、参加者の皆様に大変好評を頂きました。
今年も、それぞれの地域の特性を考慮しながら、内容をバージョンアップさせて、皆様に更にお役立て頂けるセミナーとして開催したいと考えております。

また、これまでCS/BSペイテレビの価値をよりわかり易くお伝えすべく、接触率として開示しておりました「機械式ペイテレビ接触率調査」の調査結果を、昨年2月から「推計接触世帯数、接触人数」で表記することとし、これに連動した新しいセグメントとして「エグゼクティブ世帯」や「子育て世代」などの5つの世帯ターゲットと、「トレンド先取り層」や「輸入車関心層」といった14の個人ターゲットを新たに導入致しました。そして、CAB-Jのホームページを通じて毎回調査結果を発表しながら、専門性の高い番組編成で、多様な嗜好に応えることの出来るCS/BSペイテレビのターゲットメディアとしての魅力を発信させて頂いております。

これからも「機械式ペイテレビ接触率調査」データのクオリティを向上させると共に、様々な角度から分析を行いながら、アドバタイザー・広告会社の皆様に対してより実効性の高いご提案をしていくことに注力して参ります。

本年もCS/BSペイテレビの広告価値の向上を目指し活動をして参りますCAB-Jに、メディアの皆様のご支援・ご協力を頂けます様よろしくお願いいたします。

左から、園田専務理事、井川副会長、和崎会長、岡本副会長、村山副会長、音多チャンネル放送研究所所長

左から、園田専務理事、井川副会長、和崎会長、岡本副会長、村山副会長、音多チャンネル放送研究所所長

開催日時 平成29年1月17日(火) 11時~11時40分
会場 明治記念館 千歳の間

page top

多チャンネル放送研究所 第8回発表会まとめ

2017.01.17

多チャンネル放送研究所では毎年秋に、一年間の活動を報告する発表会を行っていますが、第8回目となる2016年の発表会は12月7日(水)に明治記念館で開催いたしました。

発表会では研究所の3つのWGがそれぞれの研究内容を報告し、それを受けて所長の音 好宏から「メディア激変のなかで、多チャンネルはどう生きる」と題して、まとめと問題提起をいたしました。概要は次の通りです。

■ ユーザー分析WG
清正 徹ユーザー分析WG主査

清正 徹ユーザー分析WG主査

有料映像サービスについて2013年度より調査を行っている。
昨年度の調査ではファミリー層に対して有料動画配信サービスの認識や理解が薄いうちに獲得していく必要があるという結果に至ったことを受け、2016年は「未加入のファミリー層にどのようなメッセージを届け、どのようなサービスの提供が加入の後押しになるかを把握し、新規獲得増に資するデータとする」ことを目的に調査を実施した。

ボリューム把握のため定量調査を行ったところ、見たいコンテンツがある時に有料サービスを利用している「潜在加入層」が24.9%、「多チャンネル放送加入のファミリー層」は17.4%であった。
この中から「潜在加入層」に加入させるヒントを得るためFGIを行った。
対象者を集めたところ2つのタイプに分かれ「家族の多様性」があることもわかった。
『「個」の生活が確立されており、TV視聴もパーソナルな家庭』では、加入検討は個人のモチベーションで行われ自分の財布からの支払い。『一緒に視聴、もしくは互いの視聴番組を把握している家庭』では、家計からの支払いであった。また加入者の多くは、観たいコンテンツの視聴は加入しているサービスのみと認識しており、「レンタルよりお得」と意識している現在は高いロイヤリティが期待出来るが、有料動画配信サービスを認識すると価格メリットで切り替えるリスクがある一方、特定コンテンツ目的の加入者はチャンネル数が多いことがベネフィットではなく「コストパフォーマンスが悪い」と感じていることも伺えた。但し、「生放送(スポーツ)」や「録画してコレクションできる」というベネフィットは非常に魅力的なため、継続意向はあった。

「潜在加入層」では多チャンネル放送に興味はあるが「観たいコンテンツが無い」、「毎月3~4千円前後かかるのは高い」、WEBサイトでは「何が観られるか分からない」、「価格や内容が分からない」ことが原因で断念したという意見もあった。この「潜在加入層」と「多チャンネル放送加入層」について定量調査で収入を確認したところ、「潜在加入層」の世帯年収は加入層より100万円ほど下回った。価格感では「潜在加入層」の月額許容支払い金額は、加入層を下回るがファミリーの中では小学生以下の子どもあり家族が有料コンテンツへの許容金額が高かった。

加入のきっかけは切実なニーズの偶然の発生によることも見受けられた。戦略的な施策により機会を増やす必要があり、「観たいコンテンツを偶然見つけて加入」を偶然ではなく、もっと幅広く訴求、あるいは類似のコンテンツを多く用意することや、プラットフォームのWEBサイトで「自分が見たい情報以外がTOPに表示され、困惑する」ことを避けてすぐに加入できる仕組みが必要であることもわかった。
「潜在加入層」の月額許容支払い金額は、「多チャンネル放送加入層」を下回っており、コストパフォーマンスが重視されていくと思われる。選択制商品などで、加入意向者が見たいchに加え家族の見たいchも選択できるなど、家族を説得しやすい仕組みと価格、お試しなどでOTTサービスよりも先に知らせ、網羅性をアピールすること、Exclusiveでファンを唸らせるようなコンテンツを用意することなどが求められる。

■ 将来像予測WG
藤島 克之将来像予測WG主査

藤島 克之将来像予測WG主査

多チャンネル放送事業者の収支状況について、収入では中規模事業者の売上が増加傾向となっており、費用面では番組費の割合が増加しており、コンテンツ強化の傾向が伺える。これらを受けた収支状況としては、費用面の増加があるものの、昨年比で56.2%が増益と回答している。加入者の傾向としては、110サービスは微増傾向、124/8は毎年約5万件の減少傾向、CATVは650万件前後で推移、IPTVは昨年まで90万前後と微増傾向であったが伸びの鈍化が見受けられ横ばいという結果であった。

経営課題として、4KやOTT動画配信中心に挙げている企業が多く、なかでも動画配信への注目は高まっており、配信の実施状況でみても、自社PFでは検討段階を含め50%前後が実施の方向であるが、他社PFでは7割ほどに上る。4Kについては、現状では判断がつきにくい状況にあり、どのように関わるかというスタンスは、自社で参画するが15%程度、番組供給として関わると回答した事業者が50%と自社での参画はまだまだハードルの高さがうかがえる。2020年時点での放送サービスの状況については、4K8Kといった高画質化はまだ限定的で、オンデマンドやタイムシフト視聴が普及するとの予測が多くを占めた。

OTT市場をどのようにみるか 映像ソフト市場動向としては、全体で約5,000億円ほどで、昨年と大きな変化はないが、そのうち有料配信は、614億から961億円と増加しており、セルやレンタルの割合が相対的に低下しており、今後の予測でみても動画配信市場は堅調に伸びていくと予想されている。主に利用している有料動画配信サービスとしては、アマゾンプライム、hulu、ニコニコ動画の利用率が高く、視聴コンテンツはきっかけとともに映画、ドラマ、アニメの視聴割合が高くなっている。

昨年の配信事業者へのヒアリングに続き、放送プラットフォーム(以下、PF)は、配信サービスについてスカパーとひかりTVにヒアリングを行った。放送PFは放送ノウハウや販売チャンネルを持つことが配信サービス展開においても優位に働くと捉えているものの、配信系の動きと総合的に捉えると放送と配信はそれぞれのサービスを拡充する過程で徐々に類似化し、サービスの垣根を超えて融合していくと考えられる。その結果としてPFが乱立する環境下、今後はコンテンツや料金、複合的な付随サービスの独自色を出していくことで差別化を図ることが重要となってくる。

■ コンテンツ論WG
神崎 義久コンテンツ論WG主査

神崎 義久コンテンツ論WG主査

実態調査の結果から自主制作番組比率は全体の平均値が34.2%で前年比で約2ポイント増加し、オリジナル番組比率が過去最高の値となった。外部調達番組の比率は昨年同様の傾向で2極化が進む中、全体的には費用の伸びに対し、放送時間の伸びが上がっており、調達費用としては低廉化が伺える。
オリジナル番組の制作は89ch中84.3%が制作していると回答し、その目的としては独自性、専門性の開発という理由が多く、番組販売や配信展開を見据えた動きが昨年より大幅に増えた。オリジナル番組制作上の課題としては、昨年同様、番組制作コストの捻出が最も多く、その解決策としてはスカパー、CATV局との連携や広告スポンサーへのセールスの強化等の回答が多数を占め、投下費用回収の解決策は、昨年同様マルチデバイスなどでの配信先の拡大が最も多く、その比重の傾向は年々高くなっている。

OTTサービスの台頭による影響として、サービスウィンドウの細分化による権利の複雑化、コンテンツ獲得競争激化によるコストの高騰などの回答が多く寄せられ、それらを踏まえた方向性としては独占コンテンツの強化、付加価値の創出など長期的な活性化を目指した「差別化」とVODやOTTを視野に入れた編成戦略など「全体戦略の強化」が今後の方向性として挙げられた。配信サービスとの向き合い方は、競合と捉えて「オリジナル番組の強化」や「放送の利便性をアピールする」といった対策を打つことが重要と回答がある一方で、視聴誘導メディアと捉えて共存という考え方のもと、「共同調達による高騰する権利の緩和」、「プロモーションとしての活用」といったすみ分け可能といった回答もあった。4K・8Kについては、ノウハウの蓄積や宣伝の強化を目的とし、各PFやCATV局との連携により制作供給体制を整えて取り組む方向ではあるが、制作費や費用対効果といった課題も残っている状況である。

昨年度の提言として4Kの普及見通し視聴環境変化の考察から、4K高画質化とマルチデバイス化・VOD化は並行して進める必要があるとお伝えしたが、今年の対応状況として、オリジナル番組の強化が進み、配信PFとの関係強化の動きが見られた。権利処理面など課題もあるが、高いクオリティを維持した、安心感、信頼感のあるコンテンツを継続的に生み出していける体制を持っていることが放送事業者としての強みであり、それらを意識した活動をしていくことが肝要である。

■ メディア激変のなかで、多チャンネルはどう生きる
音 好宏 所長

音 好宏 所長

昨年の動画配信元年から動画配信への認知度は大きく変化したこの1年であったが本日の各WGの報告を総括しながら整理したい。ユーザー分析WGでは、今まで以上に量的、質的な分析を行ったが、OTTの急速な浸透が進み、家族視聴や高齢者は多チャンネル放送、比較的若い層や単身層にOTTが浸透している、家庭の多様化にあわせた形でのチャンネル開発が重要になってくるとの見方が報告された。

将来像予測WGでは、将来像加入者予測の観点で、スカパーは微増、スカパープレミアムはやや減少、CATVやIPは横ばいという見方である。経営課題としては、配信がキーワードとなっており、配信と放送をセットで考えることが重要。実用放送開始が2018年でもあり4Kにおいてはまだ様子見の面もあるが、放送の高度化の中で、4Kが市場をどのように開拓するのかという点と昨年から今年にかけてプレイヤー台頭によるOTTの動きがより目立っていることに、業界全体の関心が集まっている。OTTへのインタビュー調査では、SVODが注目されている。中でも突出して注目を集めているアマゾン、HULU、ニコニコが牽引している一方で、まだ足踏み段階のものもあり、2極化が早くも進んでいる。また、映画・ドラマ・アニメといったジャンルが牽引していることも如実に表れている。今後は有料多チャンネル放送と配信をどのようにハーモニーさせていくのかが大きな課題となってきている。

このような状況下、放送PFは機能面では、放送と配信が融合したものにならざるを得ない。OTTが急に増えたことによりPF同士のコンテンツの囲い込み、サービスや価格競争が生じており、コンテンツが市場の中で優位性を持つ状況になっている。つまり、コンジット(回路)とコンテンツのぶつかり合いの中で、これまでの制度論と同様、コンジットがコンテンツを支配し、コンジットが強かった時代から、強いコンテンツが市場において力を持つ傾向がより強まるのではないかと考えられる。その傾向は先ほどのコンテンツ論WGの発表の中で示したように、コンテンツ重視の傾向が強まり、以前以上に自主制作、オリジナルコンテンツ重視の傾向となっている。しかしながら課題も多く、制作環境、人材や投下資本の確保などがあり、それらをどのように解決しながら進めるかが焦点となるであろう。

これらのWGの報告を受けて、メディア利用を巡る変化を考えると人口は減る、日本経済の急速な回復は見込めないなか、端末の多様化も進むことも考えられ、WEBによる無料動画の普及も大きな影響力を持つ。今の若者は、スマホを横にして動画を見るのではなく、縦でコミュニケーションツールとして扱うという傾向にあり、放送型の映像コンテンツがうまく受け入れられるのか、という視点での検討も必要であろう。

多チャンネル放送の課題としては、まず加入者の伸び悩みがある。また、4Kへの取り組みや、多チャンネル放送事業者の半数が「積極的」としつつも、もう半数が「競合」との見方をしている動画配信サービスへの向き合いなどがあげられる。放送サービス自体が動画配信をひとつのメルクマールとして考えると、いま放送は、その高度化とともに新たな転換期を迎えていると言える。放送ビジネスの環境変化をどのようにとらえていくのか、動画への接触の変化をどのように追い風にしてくのかを改めて精緻に考える必要がある。20年前から言われ続けている環境の変化に、これまでは、ある種、対症療法でしのいできた、または、しのげてきた感があるが、それも長続きしないのではないか。同じく担い手であるケーブル事業者の例をみると、新たな付加サービスを加えながらビジネスの高度化を展開。インフラ的な役割が強まるなか、放送事業収入は頭打ちとなっている。
ただ、近年の動きとして、コミュニティチャンネルを活用した地域コンテンツの強化、バラバラだった地域コンテンツを統合する動き、PFの整備などを長い目でみたプランとして推進している。加えて女性の活躍、ジャーナリズムの再考といったことも含め、ソフト部分をより強化する動きが進んでおり、4Kの取り組みにも積極的である。加入者が伸び悩む頭打ちの中、それらをクリアするため取り入れようとしている。重要なことは視聴者に目に見える形で便益が示されなければならず、コンジット(回路)の支配力が揺らぐ中で、利用者に支持されるサービスでなければ、市場には受け入れられない歴史もある。

昨今、「テレビの地殻変動」という言葉がよく使われているが、問われているのは自分たちの立ち位置、アイデンティティは何かということではないだろうか。今回のWG報告は昨年とは順序を変え、ユーザーの分析を行い、事業者の将来予測&OTTヒアリングをし、その結果やはりコンテンツを重視することが大事というプロセスでおこなった。

アメリカのネットフリックスが「ハウスオブカード」でエミー賞を受賞し、強いコンテンツをジャンピングボートにして、世間にその名を知らしめた例や、アジア・コンテンツに中国の投資家が積極的に投資をしている例などの成功例は参考にできる。多チャンネル放送のコンテンツにおいては、制作費、人材の問題など課題はあるが、それらの課題を乗り越えるような多チャンネル放送ならではのコンテンツを積極的に排出していくことが求められているように思う。

広告モデルによる放送ビジネスでは、マクロ経済連動型のゼロサム市場であり、その拡大には国内市場だけでは難しいところもあるが、プラスサムとなるような海外市場との連動、規模の経済による効率化という選択肢、強いコンテンツによってコンジットの枠組みを超えて、新たな形での人材、権利、資金調達の確保なども一考の余地はある。また、日本は放送コンテンツの流通ルートが、系列によって縛られがちであることや、多チャンネル放送の独自コンテンツの育て方など、再検証してみる価値があるのではないか。他方で、TBSが展開している「デジコン6」のような試みもある。アジアのコンテンツを日本ではどのように展開できるのか、また、ローカル・コンテンツや国際共同制作の可能性などでも、新たなビジネスチャンスが作れるのではないかなど、その可能性を検討すべきだろう。改めて、多チャンネル放送らしいコンテンツとは何なのか。加えて、そのパワーをより大きくするためにはどうすればよいのかを考える時に来ている。今回の報告が、多チャンネル放送市場のさらなる開拓のビジネスにつながるヒントになればと思う。

開催日時 平成28年12月7日(水)
会場 明治記念館(港区元赤坂)
参加社数 46社 96名

page top