異色の家族小説として大反響を呼んだ、浅田次郎の『母の待つ里』の映像化。
都会で孤独に暮らす松永徹(中井貴一)、古賀夏生(松嶋菜々子)、室田精一(佐々木蔵之介)の3人の“子供”が、ビジネス上の“母”(宮本信子)が待つ里を訪ねる斬新な設定。舞台となる岩手県遠野市の美しい日本の原風景も見所。ベテラン俳優陣による感動のミステリアス・ファンタジー。
作品紹介
仕事人間の松永徹(中井貴一)にとって、それは40年ぶりの里帰りだった。朧げな記憶をたよりに実家にたどり着くと、母(宮本信子)は笑顔で迎えてくれた。嬉々として世話を焼いてくれる母、懐かしい家、懐かしい料理に、徹は安らぎを感じる。しかし何故だか、母の“名前”だけが思い出せない…。
一方、古賀夏生(松嶋菜々子)も久しぶりの「里帰り」をする。夏生が向かった先も、「同じ母」が待つ家。そして、妻を失った室田精一(佐々木蔵之介)も、居場所を求めて「同じ母」が待つ「ふるさと」へ向かう…。
ねえ、母さん。あなたは、誰ですか?
すべてがビジネスで結ばれた親子の絆。謎が解ける時、感動が押し寄せる。
作品動画
【審査員講評】
ノンフィクション作家 吉岡 忍
都会暮らしにふっと疲れたとき、登場人物たちは思い立って故郷へと向かった。青々とした山河、気さくな隣近所、古い家、老いた母が手ずからつくってくれる晩ご飯。映像は思いっきり田舎の懐かしさ、人なつこさ、ぬくもりを描いてみせる。
だが、この全体が外資系カード会社提供の「レンタル故郷」「レンタル隣近所」「レンタル老母」のサービスだったとしたら? 過疎、ビジネス、AI……。虚と実が行き交うストーリーの先に現れる、東日本大震災後の東北の姿。
浅田次郎原作のミステリアスファンタジーをていねいに、さり気なく、トリッキーに描きながら、視聴者の目をシリアスな現実に向かわせる制作陣と出演者の技量に、脱帽!