新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて公演中止が続いていた劇場において、オリジナル番組を制作するWOWOWの演劇プロジェクト。1991年の開局以来、演劇を中継してきたWOWOWが劇場で演劇人と何かできることはないかと企画。その第一弾としてBunkamuraシアターコクーンを舞台に芸術監督を松尾スズキ氏が務め劇場スタッフ、テレビスタッフが協業して制作した劇場愛溢れるエンターテインメント番組を緊急編成した。
作品紹介
オープニングは、松尾スズキが軽快に踊りながら劇場へ入るシーンから始まる。舞台には「マツノボクス」と名付けられたアクリルボックスが用意され、演者は皆その中で歌い・踊り・演じ、ソーシャルディスタンスを考慮した新しい試み。観客は松尾スズキひとりだけ。歌コーナーは、ミュージカル『キレイ』より代表曲4曲、『もっと泣いてよフラッパー』より松たか子の「スウィング・メモリー」。プロジェクト共通企画である朗読劇(井上ひさし「十二人の手紙」より)は、大竹しのぶと中村勘九郎の豪華共演。その他、書き下ろしアクリル演劇「ゾンビVSマクベス夫人」、アクリル剣劇、対談、劇場案内コーナーなど。
撮影:宮川舞子
作品動画
【審査員講評】
放送作家 石井 彰
新型コロナウイルスの感染拡大により、演劇や音楽の公演中止が続き、劇場は瀕死の状況にあえいでいる。シアターコクーン芸術監督松尾スズキをたった一人の観客として上演された、歌と踊りと朗読の素敵なショー。感染防止のために作られたアクリルボックスの四角い箱まで逆手にとって踊りの小道具として使いこなし、拍手の効果音まで見せてしまう=遊び心あふれる姿勢が、視聴者に「劇場は死んでいない」という大切なメッセージを伝えた。急きょ編成・放送した放送局、出演者、そしてすべてのスタッフに、スタンディングオベーションを贈りたい。コロナ禍にあきらめない、何もしないのではなく出来ることの可能性を楽しく見せてくれた祭でした。