捜査一課の刑事・田川(織田裕二)は、鑑識課の木幡(桜庭ななみ)に頼まれて身元不明の死者リストを調べていた。田川は、リスト「903」の男が自殺に見せかけて殺害されたと見抜く。田川と木幡は男の死を捜査し、男が沖縄県出身の派遣労働者・仲野(満島真之介)だと突き止める。特殊班捜査係の鳥居(伊藤英明)は人材派遣大手ホープネスの森(髙嶋政宏)、ヒラガモーターズの松崎(鶴見辰吾)と緊密な関係を結んでいた。田川は生前の仲野がホープネス系列の人材派遣会社に登録し、ヒラガモーターズの工場に働きながらネット上で何かを告発しようとしていたことを知る。その真相は?
作品紹介
ある派遣労働者の死をきっかけに、その裏に隠された真実を明るみに出すため刑事が力の限りを尽くす姿を描く。労働をめぐる重い問題提起と、人間の情熱のぶつかり合いが熱く絡むドラマを目指した。
【審査員講評】
上智大学 文学部 新聞学科 教授 音 好宏
いまは閑職にある初老の刑事が、身元不明の死者リストから自殺に見せかけて殺害された男性を見つけ出す。亡くなった男の足跡を追うことで浮き彫りになっていくのは、未来を夢見て沖縄・先島を離れた若者に降りかかった差別と貧困の現実だった。埋もれていた殺人事件の捜査を通して描くのは、正規社員と差別されワーキングプア化する非正規雇用労働者の職場環境の実態や、中央と地方の格差、雇用する側とされる側の貧富差など、エンターテイメント性を維持しながらも、現代日本の構造的問題に取り組む骨太の社会派ドラマに仕上がっている。派遣労働者に支えられる自動車会社と人材派遣会社の癒着や、自動車会社のリコールなど、広告放送では描きにくいテーマにも、果敢に挑んだ姿勢も評価したい。津嘉山正種、篠原ゆき子など、脇役の演技も光る。